バルザック
オノレ・ド・バルザックは1799年フランスのトゥールに生まれた。父は農民の出で、自らの努力で役人にまで成りあがった人である。家族の希望で法律を学び、代訴人事務所で書記として働いたが、どうしても作家になろうとした。初期に書いた小説はことごとく失敗し、出版社や印刷所を経営してみたが莫大な借金を背負い、以後生涯にわたって債権者に追われつづけた。借金を返すため、毎日大量の濃いコーヒーを飲み、真夜中から翌日の昼まで書きつづけ、ときには一日十数時間も働いた。三十歳のとき小説『ふくろう党』で名を上げ、以後二十年のあいだに九十篇を超える小説を書いて『人間喜劇』と総称し、二千人以上の人物を造形して、フランス社会の「書記」たらんとした。ポーランドの貴婦人ハンスカ夫人と十数年にわたって文通し、ついに結婚したが、結婚からわずか五か月後に世を去った。