ダブリン市民
近日刊行 この作品の翻訳は準備中で、近く書庫で刊行されます。
解説
『ダブリン市民』は十五篇の短篇小説からなる。ジョイスは、祖国のための「道徳史」の一章を書きたい、ダブリンは「麻痺の中心」なのだと語った。物語は少年時代、青年時代、成年時代、公的生活の順に配列されている。老神父の死に向きあう少年。恋する少女への贈り物を買いにバザーへ急ぐが、着いたときにはもう店じまいで、「暗闇を見あげながら、私は自分が虚栄心に駆りたてられ、愚弄された哀れな生き物であることを悟った」という少年。波止場で恋人とともに遠い国へ旅立とうとしながら、最後の瞬間に鉄柵を握りしめて動かなくなる娘。酒場で恥をかかされ、家に帰ってわが子を打ちすえる小役人。最後の一篇「死者たち」は英語文学で最も美しい中篇の一つである。クリスマスの晩餐会のあと、主人公は妻が自分のために死んだ一人の少年をずっと心にいだきつづけていたことを知る。窓の外では雪が、生きているすべての者と死んだすべての者の上に、しんしんと降りつもっていく。