老子
老子――「老先生」――は、『道徳経』がそのもとに伝えられてきた名である。現存する最古の記録を残した歴史家司馬遷(前145ごろ〜前86ごろ)によれば、老子の姓は李、名は耳であった。彼は周の朝廷で記録をつかさどり、孔子がかつて礼について問うために彼を訪ねたという。周の衰えを見て、彼は西へと旅立った。国境の関所で関守が教えを書き残してほしいと頼むと、彼は道と徳について上下二篇、五千字あまりの書を著した。そして先へと去り、「その終わるところを知る者はない」。
司馬遷自身もほかの言い伝えを記しており、現代の学者たちはこの書が一人ではなく複数の人の言葉を集めたものと考えている。しかし二千年以上にわたって、老子の名はその教えを代表してきた。哲学としての道家の祖として敬われ、のちに道教では神として崇められた老子は、孔子と並んで古代中国で最も影響力のある思想家である。